写真の編集を始めようとすると出てくる「RAW現像」と「レタッチ」という単語。
RAW現像とレタッチは大まかには似ている部分が多いので、明確な違いまで分からないという人も多いのではないでしょうか。
特にソフトを選んでいる途中だと、「どっちのソフトが良いの?」という不安や疑問もあるかと思います。
この記事ではそんな悩みを解決するために、RAW現像とレタッチの違いについて解説していきたいと思います。
大まかにソフトによって区別できる
まずはRAW現像ソフトとして有名なLightroomとレタッチソフトとして有名なPhotoshopについて解説しましょう。
LightroomはRAW現像ソフトであり、名前の通りRAW現像をする事ができます。
一方Photoshopはレタッチのソフトであり、主にJpegやGifなど画像編集全般に向けて作られています。
画像編集ソフトであるPhotoshopでは通常、RAWデータを開くことはできません。
そこでPhotoshopでRAWデータを開くために、CameraRAWという無料のプラグインをインストールします。
この点からPhotoshopはRAW現像のために作られたソフトではない事が分かると思います。
RAW現像とレタッチの違いは曖昧
LightroomとPhotoshopで開けるデータに違いがあるものの、補正の項目については露出や彩度など同じ項目もあります。
同じ部分があるので、厳密な境界線は難しいのですが、まず1つの答えとして、RAW現像とレタッチにはっきりとした境界線はありません。
画像編集には多くの項目があるため、人によって若干の意見の違いが出ています。
RAW現像はたった3つの項目のみ

僕の思うRAW現像とは、以下の3つです。
- 露出の調整
- 色を変える
- トリミング
この3項目を上げたのにはもちろん理由があり、これらの補正は写真がデジタルになる以前からできた事です。
つまり僕はデジタル以前にできていた補正とその延長がRAW現像という認識です。
ただ露出の調整1つを取っても、写真全体の補正から、シャドウやハイライトの調整、ブラシを使った覆い焼きなど多岐に渡りますが、このような部分的な補正も含めてRAW現像です。
RAW現像とフィルム現像の違い
フィルムの編集について解説する前に、RAW現像とフィルムの現像の違いについて解説します。
RAW現像はご存知の通り、RAWデータを編集する作業。
フィルムの現像とはフィルムに処理をして、ネガを作る作業です。
フィルム写真でRAW現像のように色味などを調整する作業は、ネガを作る次の工程であるプリントにあります。
つまり実際の作業として近いのは、「RAW現像=ネガを印画紙にプリント」であり、「RAW現像≠フィルムの現像」という事になります。
「RAW現像=フィルムの現像」だと間違って認識することで、RAW現像をJpegに書き出す作業という人がいます。
このような違いが出てしまう背景には、過去に写真屋が現像とプリントを一緒に行っていた事が背景にあると考えられます。
写真屋で現像とプリントを同時に行う事で、2つの作業が混同され、「現像=現像+プリント」という間違った認識が起こるようになってきました。
実際に「フィルム 現像」でインターネットで検索しても、検索結果にはプリントの事が表示されるので、間違って認識してしまうのも無理はありません。

あくまで推測ですが、RAW現像という言葉の背景にも、写真の編集作業にあたるプリントを現像と呼ぶようになった事があるのではないでしょうか。
写真編集は現代の技術ではない
海外の職人によるフィルムのプリント

フィルム写真において、一般家庭用では、手の混んだプリントをする事はそうありませんが、一方でプリントにも職人(プリンター)がおり、用途に応じて手を加えます。
例えばプリント作業で露出調整や露出の部分補正を行ったりしていました。
プリント以外でも、フィルムを変えて色温度を調節したり、低彩度フィルムを使う事で色彩を調節したりしていました。
ざっとまとめるとフィルム写真でも以下のような事ができていたのです。
- プリント作業
- 露出調整
- 覆い焼き、焼き込み
- コントラスト調整
- トリミング
- ホワイトバランス調整
- フィルムを変える
- モノクロ
- 低彩度
- ホワイトバランス
- フィルターを付ける
- ホワイトバランス
- 色かぶり
- カラーフィルター
上記をまとめた結果が、先ほどRAW現像として紹介した「露出の調整」「色を変える」「トリミング」という3つの項目に結びつきます。
フィルムがデジタルになった事で、これらを職人が手作業でする必要は無くなり、編集はPC上で行う身近な作業となったのです。

フィルターはデジタルになっても残っている加工技術だけどね。
LightroomはRAW現像ソフトなのか
RAW現像ソフトとして名高いLightroomですが、その他のRAW現像ソフトも含めて「RAW現像“だけ“できるソフト」かと言うと答えはNoです。
それはソフトの中に、スポット修正(センサーダストの除去)や透かし文字の挿入などができるからです。
このような補修機能はフィルムの現像では不可能であり、レタッチの分野です。
結果的にLightroomは「レタッチもできるRAW現像ソフト」と言うのが正しい答えです。
レタッチは画像全体における編集全般
レタッチというのは扱う範囲がとても広く、写真編集だけに留まりません。
例えばこんな作業のレタッチの一部です。
レタッチメイキング https://t.co/XBVoxdIEps pic.twitter.com/oCmjTBal67
— 大谷キミト/レタッチャー/ビジュアルデザイナー / Photoshop (@niepce356) March 3, 2021
これは有名なレタッチャーの大谷キミト氏のツイートです。
レタッチは仕事にできるほどに、幅広く専門的な知識が必要です。

フィルムプリンターの現代版のよう。
写真の編集の事はフォトレタッチと呼ぶ事が多いのですが、結局の所同じソフト内で作業をするので、レタッチとフォトレタッチの境界線も曖昧です。
そこで写真編集で使うレタッチの例をいくつか挙げてみました。
- 合成
- 青空に雲を入れる
- 星空を重ねて星を流す
- 文字を入れる
- 除去
- センサーダストを消す
- 肌の毛穴を隠す
- 変形
- 人物の目を大きくする
写真用途ならRAW現像ソフトを選ぼう
ここまでRAW現像とレタッチの違いについて解説してきましたが、どちらかを選ぶなら写真用途ならRAW現像ソフトがオススメです。
理由についてですが、RAW現像ソフトには写真の管理機能が付いており、写真の管理と編集作業が1つのソフトで完結します。
管理機能も申し分なく、フラグやレーティング、カラーラベルなどメーカー純正の写真管理ソフトにも劣らない管理機能が備わっています。
理由のもう1つにソフトの使いやすさがあります。
Photoshopなどのレタッチソフトは様々な機能が備わっている分、使い方も複雑です。
編集を始めようとしても「どこから触れば良いかわからない」という状態になる事もあり得ます。

今でこそ、Photoshopも少し使えますが、僕は初見で心が折れました。
RAW現像の方がレタッチソフトより編集できる項目が少ないとはいえ、写真編集においては十分な機能は備わっています。
むしろ機能が少ない分、写真用にフォーカスして作られているので、画面の見やすさや編集のしやすさを取っても、レタッチソフトより使いやすいです。
補助機能としてレタッチソフトを
RAW現像ソフトで完結できる事は事実なのですが、稀にRAW現像ソフトではできない(苦手な)作業があります。
このような時にPhotoshopなどのレタッチソフトを使えば、レタッチソフトの覚えるポイントも最小限で済みます。
また、LightroomとPhotoshopは同じAdobeのソフトだけあり親和性も高く、Lightroomから写真を選んでPhotoshopを起動する事も可能です。
RAW現像ソフトはLightroomだけではなく、よりレタッチ機能が豊富なLuminarやSILKYPIXなどもあります。
これらの紹介したRAW現像ソフトについては以下の記事にてまとめてあるので、こちらをどうぞ。
