「シャッタースピード……?わたくしがボタンを連打する連射速度のことですの!?」
本日も大真面目に勘違いする私に、先輩はまた大きなため息をついた。
「シャッタースピードは光を取り込む時間」
隣に座っている写真部の一人が耳打ちする。
ピンと来ていない私の横で、部室の隅にいた部員が庶民のソウルフード『カップ焼きそば』のお湯を捨て始めた。
「ご覧あそばせ!シンクへとお湯が注がれる、ダイナミックな滝行のような光景を!」
今だ!とシャッターを切ったものの、シャッター音は『カ…シャ……』と鈍く、撮れた写真は滝行というよりナメクジが這った痕のよう。
「キーッ!なぜ上手に写りませんの!?」
暴れる私の隣で、先輩のカメラから鋭い『カシャッ!』という一瞬の駆動音が聞こえた。
(……え?今の音、わたくしの『カ…シャ……』と全然違いますわね?)
気になった私は自分のカメラのダイヤルを適当に回して『カシャッ!』と聞こえる速さに合わせ、湯切りに向かって半信半疑でシャッターを切る。
「お、お湯が……!空中でピタリと止まっていますわ!?」
モニターに写っていたのは、ダイヤモンドの粒のように静止したお湯の一滴一滴。
「……なら、逆にするとどうなるのかしら?」
今度は『カ…………シャ』と長く重い音が響く。今度は流れる絹糸のような幻想的なお湯が写った。
「シャッタースピードって、シャッターが開いている時間そのものだったのですわね! 」
シャッタースピードとは、シャッターが開く時間で明るさを調節する仕組みです。
しかし、シャッタースピードの役割はそれだけではありません。
シャッタースピードは被写体の動きの表現を可能にします。
シャッタースピードと写真表現
シャッタースピードを変えると、肉眼ではそのままは捉えられない二つの表現を作り出すことができます。
- 静止(高速シャッター)
- 1/1000秒以上
- 動いているものを静止したように描写
- 例:飛び散る水しぶき、スポーツの決定的な瞬間、野鳥の羽ばたき
- ブレ(低速シャッター / 長時間露光)
- 1秒以上
- 動いているものの軌跡を描写
- 例:糸のように流れる滝、夜景での車のライト、幻想的な星空
ブレを防ぐシャッタースピード
意図的なブレは表現ですが、意図としないブレは写真における失敗の大部分です。
被写体ブレ
被写体ブレは、被写体の動く速度に対して、シャッタースピードが遅すぎる場合に起こります。
- 被写体ブレ対策:シャッタースピードをさらに速く設定
- 子供やペット:1/250秒以上
- スポーツ:1/1000秒以上
手ブレ
手ブレは、シャッターが開いている間に、カメラを持っている手が動く時に起こります。
- 手ブレ対策:1/(レンズの焦点距離)秒
シャッタースピード優先オート(S/Tvモード)
シャッタースピードを変えると、光が入る時間が変わります。
Sモードでは、その変化に応じて絞りやISO感度(オートの場合)が自動的に調節されます。
シャッタースピードが描く、時間の表情
シャッタースピードは、写真に「時間の流れ」を記録する表現方法です。
止めたいなら速く、流したいなら遅く。
……少しズルいのかもしれませんが、僕は標準域の日常的な撮影なら「1/200秒」くらいで、固定しています。
シャッタースピードの仕組みを理解した私は一気に大興奮。
「なるほど!ダイヤルひとつで時間を操れるということですわね!よーし、わたくしも完璧な一瞬を撮ってみせますわ!」
すっかり夢中になった私は、購買でカップ焼きそばを大量に買い込み、お湯を注いでは湯切りの瞬間をパシャリ、パシャリ。
「違いますわ、もっと速く……!ああ、今度は遅すぎますわ……!」
……数十分後。
「ふ、ふふふ……できました!完璧な一枚ですわ……!」
部室のテーブルの上にはズラリと並んだ、湯切りされた十数個のカップ焼きそば。
我に返った私は、山積みになった焼きそばと冷や汗を流す部員たちを見回し、背筋が凍りついた。
「あ、あの……シャッタースピードで、進みすぎた時間を戻すことはできませんの……!?」

姫のワガママ
基本的に『1/200秒』で足りますわ。
駄目だった時に次の設定を考える。
それくらいシンプルでよろしくてよ!
ISO感度。ずばり『International Organization for Standardization』ですわね!
急な停電も、わたくしの華麗なる閃きで、完璧な一枚に変えてみせますわ!
僕とワガママ姫
「理屈」を「愛」に変える、10のレッスン
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