絞りとは、レンズを通過する光の量を調整する仕組みです。
しかし、絞りの役割はそれだけではありません。絞りは、写真の空間の見え方そのものを制御する装置です。
F値を変えるということは、
- ピントの範囲(被写界深度)
- レンズの性能の引き出し方
を決めることでもあります。
そのため、単純な明るさの調整とは違い、判断には意図が必要になります。
「騒がしい会場でも彼女には綺麗な佇まいでいてほしい。
けれど、そのざわめきが彼女を引き立てるのも事実だ。
どこまでなら“ちょうどいい”か。
そのバランスは、僕が決める」
被写界深度のコントロール
被写界深度とは、ピントが合っているように見える範囲のことです。
厳密には、完全に合焦している範囲ではなく、「許容できるボケ量」に収まっている領域を指します。
- F値を小さくする
- 被写界深度は浅くなります
- ピント面から少し外れただけで、大きくぼけます
- F値を大きくする
- 被写界深度は深くなります
- 前後の情報がより多く残ります
例えば人物撮影では、F1.8では瞳に合わせると耳はぼけ、F8では顔全体が安定して描写します。
これは「ボケが強いか弱いか」の話ではありません。どこまでを写真に写すかの選択です。
レンズ性能のコントロール
絞りは、被写界深度だけでなく、レンズの描写にも影響します。
レンズは複数のガラス群で構成されており、開放では、レンズの中心部だけでなく周辺部の光線も使用します。
周辺部の光線は、収差の影響を受けやすく、解像度がわずかに甘くなります。そのため、多くのレンズでは開放付近で描写がやや甘くなります。
これは構造上の特性であり、不良ではありません。
レンズは、中心部ほど光学的に安定しています。
少し絞ると、レンズ中心部の光線が主体となり、コントラストが向上し、画質が安定します。
一般的にF5.6〜F8付近で描写がピークに近づくことが多いのはこのためです。
絞りすぎによる回折
しかし、絞りすぎると回折が発生します。
開口が小さくなりすぎると、光は線ではなく波としての性質を強く示し、像が理論的に拡散します。
その結果、解像度はむしろ低下します。
絞れば良くなるわけではありません。
最適な領域が存在します。
実際に使うときの目安
- F1.4-F2.8
- 主題分離を最大化
- ポートレート、物撮り
- F4.0-F5.6
- 解像と収差のバランスが安定
- スナップ、日常記録
- F8.0
- 空間全体の安定描写
- 風景、建築
- F11
- 回折リスクを理解した上で使用
- 長時間露光、マクロ
ただし、これは絶対的な正解ではありません。被写体や距離、センサーサイズによって変化します。
絞りと光量との関係
なお、絞りを変えるとセンサーに届く光量も変化します。
Aモードでは、その変化に応じてシャッタースピードやISO感度が自動的に調節されます。
窓を少し開ければ、空気は穏やかに入る。
大きく開ければ、一気に部屋の温度が変わる。
いつも全開にする必要はない。
彼女が心地よくいられるところで、止めておくべきなんだ。
見せるものと、残すものを加減する
絞りは、単なる明るさの調整機構ではありません。
どこまでをはっきり見せるのか。どこからを曖昧にするのか。
空間の情報量を設計する装置です。
F値を小さくすれば背景はぼけますが、ピントの許容範囲は狭くなります。
F値を大きくすれば被写界深度が広くなりますが、立体感は穏やかになります。
さらに、レンズの描写特性や回折の影響も存在します。「絞れば正解」という単純な話ではありません。
だからこそ重要なのは、数値そのものではなく、
何を見せたいのかを先に決めることです。
絞りを選ぶということは、限られた条件の中で優先順位をつけるということです。
「全てを鮮明にすることが、正解とは限らない。
少しだけ残す。少しだけ手放す。
その加減が、彼女をいちばん美しく見せるんだ。
ほら。騒がしい場所でも、キミはこんなに綺麗に輝いてる」
キミの一瞬のまばたきも。 静寂の中で夜空を眺める、ひとときも。
ボクが刻むリズムひとつで、世界の見え方は変わる。
さて、次はどんな時間を、ボクに触れさせてくれるんだい?
僕とワガママ姫
「理屈」を「愛」に変える、10のレッスン
- Prologue
- Lesson 1
- Lesson 2
- Lesson 3
- Lesson 4
- Lesson 5
- Lesson 6
- Lesson 7
-
ワガママ姫とシャッタースピード(準備中)
- Lesson 8
-
ワガママ姫とISO感度(準備中)
- Lesson 9
-
ワガママ姫と不機嫌の正体(準備中)
- Lesson10
-
ワガママ姫とマニュアル露出(準備中)
- Epilogue
-
ワガママ姫とRAW現像(準備中)
僕とワガママ姫
「理屈」を「愛」に変える、10のレッスン
- Pro
- L 1
- L 2
- L 3
- L 4
- L 5
- L 6
- L 7
-
ワガママ姫とシャッタースピード(準備中)
- L 8
-
ワガママ姫とISO感度(準備中)
- L 9
-
ワガママ姫と不機嫌の正体(準備中)
- L10
-
ワガママ姫とマニュアル露出(準備中)
- Epi
-
ワガママ姫とRAW現像(準備中)

