第1話:ワガママ姫と撮影モード|P・A・S・M、どれで彼女と踊る?

カメラのダイヤルに並ぶ「P・A・S・M」という文字。

全部使いこなそうとして説明書と格闘したり、「本格的に撮るならマニュアル(M)だ」という言葉に縛られて、設定に迷っている間にシャッターチャンスを逃してはいないでしょうか。

ファインダーを覗く前に、目の前からシャッターチャンスが去っていく。それが一番もったいないです。

そんなことに時間を使う必要はありません。もっとシンプルに考えて大丈夫です。

結論から言えば、覚えるべき撮影モードは「A(絞り優先)」と「S(シャッタースピード優先)」の二つだけです。

「今日はどの手を取ってほしいんだい? 
 僕がリードするのか、それとも君の気まぐれに身を任せるべきか……。
 やれやれ、最初から結論は決まっているというのに」

なぜ「P」と「M」はメインにならないのか

ここで、「プログラムオート(P)」や「マニュアル(M)」についても触れておきます。

なぜこれらが“最初の一歩”としておすすめできないのか、理由があります。

プログラムオート(P):便利すぎて「原因」が見えなくなる

Pモードはいわば「AとSの中間」のようなモードです。

カメラがすべて決めてくれるので、大きな失敗は少ない。一見、万能に見えます。

しかし、すべてをカメラに委ねてしまうと、「なぜその写真が撮れたのか」という根拠が残りません。

この状態で撮る癖がつくと、失敗したときの原因が掴めず、次の成功につながりません。

Pモードは「とりあえず写す」には便利ですが、写真が上達するには少し優しすぎる環境です。

マニュアル(M):楽しさとリスクは隣り合わせ

マニュアルモードは、すべての設定を自分で決めるモードです。

カメラを操作している実感は確かに楽しく、趣味として突き詰めるなら素晴らしいモードです。

ですが、使いこなすには相応の勉強と慣れが必要になります。

設定に気を取られ、ダイヤルを回している間に、最高のシャッターチャンスは容赦なく過ぎ去ります

Mモードは「表現を追い込むための道具」です。シャッターチャンスを失ってまで使うものではありません。

何を撮るかで、撮影モードは決まる

迷ったら、この質問だけ

今、撮ろうとしている被写体は、 止まっていますか? それとも動いていますか?

考えるのは、それだけで十分です。

  • 止まっている → A(絞り優先)
  • 動いている →S(シャッタースピード優先)

あとの面倒な計算は、すべてカメラに任せてしまいましょう。

絞り優先オート(A / Av):ボケるか、あまりボケないか

ここで言うのは、ボケの有無ではなく、どれくらいボケさせるか、つまりボケ量の話です。

風景やスナップ、ポートレートまで、撮影のほとんどはこのモードで完結します。

このモードで決めるのは、ボカしたいか、隅々までクッキリ見せたいか。ただそれだけです。

迷ったらこの数字

  • ボカしたい時:F値を一番小さい数字(開放)
  • ボカさない時:F8 前後

自分がやりたい「表現」だけを決めて、あとは機械に働いてもらう。

この割り切りが、撮影を一番軽快にしてくれます。

ボケの本質を深く知りたい人はこちら

シャッタースピード優先オート(S / Tv):写し止めるか、躍動感を出すか

シャッタースピードは、「ブレを防ぐ設定」ではなく、動きをどう見せるかを決めるためのものです。

止まっている被写体はAで十分ですが、相手が動くなら話は変わります。

元気に走り回る子ども、予測不能な動きをする動物、目の前を通り過ぎる車。

これらを撮るときに優先すべきなのは、ボケではなく、 ブレさせずに確実に写し止めることです。

迷ったらこの数字

  • 歩いている人やペット:1/250秒 以上
  • 走り回る子どもやスポーツ:1/500秒〜1/1000秒

ブレてしまった写真は、後からどう頑張っても直せません。

動くものを撮るなら、迷わずSに切り替えてください。

露出の不安は「ISOオート」に任せる

AモードでもSモードでも、共通して設定してほしいのが「ISO感度のオート(ISO AUTO)」です。

絞りを絞ったり、シャッタースピードを速くしたりすると、画面が暗くなることがあります。ですが、そこで怯えて設定を妥協する必要はありません。

今のカメラは優秀です。ISO感度をオートにしておけば、明るさはカメラがうまく調整してくれます。

多少ノイズが乗ったとしても、ミスカットになるよりは、はるかにマシです。

※ 可能であれば、ISOの上限(例:ISO6400など)だけは設定しておくと安心です。

「ボケの罠」に注意する

ここで、ついやってしまいがちなのが「ボケの罠」です。

「子どもをふんわり可愛く撮りたい」 その気持ちは自然です。そこでA(絞り優先)を選び、ボケを最大にする。

ですが、Aは「目の前の被写体がどれだけ激しく動くか」までは配慮してくれません。

ボケを優先した結果、Aが選んだ遅いシャッタースピードのせいで、 肝心の顔がブレてしまったら本末転倒です。

演出(ボケ)に夢中になって、 一番残したかったはずの“顔”を失ってはいけません

撮影モードは、迷わないためにある

マニュアルでダイヤルを回して写真を撮る人だけが、写真が上手い人ではありません。

最適な撮影モードを選び、目の前の光景に合った設定を瞬時にできる人が、結果として良い写真を残します。

撮影モードは、難しいことをするためではなく、 余計なことを考えずに撮るためにあります。

今日カメラを持ち出すなら、ダイヤルはまず「A」に。

被写体が動いたら「S」に切り替える。

それだけで十分です。

設定で悩む時間も、失敗した一枚も、無駄ではありません。

「さぁ、手は掴んだよ。
 あとはキミのステップに合わせて、僕がシャッターを切るだけだ」
Next Invitation

ようやく、彼女との「付き合い方」がわかってきたね。
でも、気をつけて。お姫様の心は、光ひとつで移ろうもの。
次は、彼女の機嫌を優雅に整える「魔法の数字」について話をしよう。

第2話:ワガママ姫と露出補正|明るい景色と、暗いプリンセス


僕とワガママプリンセス

「理屈」を「愛」に変える、10のレッスン

Prologue

ワガママ姫と僕|不器用な彼女と創る、最初の1枚

Lesson 1

ワガママ姫と撮影モード|P・A・S・M、どれで彼女と踊る?

Lesson 2

ワガママ姫と露出補正|明るい景色と、暗い彼女

Lesson 3

ワガママ姫とオートフォーカス|彼女の視線の導き方

Lesson 4

ワガママ姫と焦点距離|彼女が動けば、世界が動く

Lesson 5

ワガママ姫と露出の三要素|彼女を輝かせるための三重奏

Lesson 6

ワガママ姫と絞り|彼女の瞳も、彼女の景色も。その加減は僕が決める

Lesson 7

ワガママ姫とシャッタースピード(準備中)

Lesson 8

ワガママ姫とISO感度(準備中)

Lesson 9

ワガママ姫と不機嫌の正体(準備中)

Lesson10

ワガママ姫とマニュアル露出(準備中)

Epilogue

ワガママ姫とRAW現像(準備中)

僕とワガママプリンセス

「理屈」を「愛」に変える、10のレッスン

Pro

ワガママ姫と最初の1枚

L 1

ワガママ姫と撮影モード

L 2

ワガママ姫と露出補正

L 3

ワガママ姫とオートフォーカス

L 4

ワガママ姫と焦点距離

L 5

ワガママ姫と露出の三要素

L 6

ワガママ姫と絞り

L 7

ワガママ姫とシャッタースピード(準備中)

L 8

ワガママ姫とISO感度(準備中)

L 9

ワガママ姫と不機嫌の正体(準備中)

L10

ワガママ姫とマニュアル露出(準備中)

Epi

ワガママ姫とRAW現像(準備中)

いいから、カメラ持って外行こうぜ!

俺のデジモノ手記


01 思考の章

写真は、楽しければ良い


02 技術の章

カメラで、遊ぶ


03 表現の章

「誰か」の真似は、もう終わり


04 結実の章

今の僕の答え


付録

使用機材とカメラ設定