カメラのフラッシュを買おうと思って調べていると出てくる機能が、「TTL調光対応」という文字。
TTLとは、「Through The Lens(スルーザレンズ)」の略で、日本語で「レンズを通る」という意味です。
この記事で紹介するTTLはTTL調光ですが、TTLはフラッシュに限った機能ではありません。
レンズを通ってきた光を元にコントロールしていればTTL制御です。
- TTL測光(露出の測定)
- TTLオートフォーカス(ピント位置の測定)
浸透しすぎてTTLの名称が消えましたが、普段から使用している自動露出やオートフォーカスもTTLです。
例えば、TTL測光が登場する前は外部の露出計で光量を測定して、カメラの絞り、シャッタースピードなどを変更していました。
オートフォーカスにおいても、開発初期では超音波やレーザーの跳ね返る時間で測距を行い、ピントを調整していた時代もありました。
TTL調光の動き
冒頭でも紹介しましたが、TTLとはレンズを通ったコントロールです。
つまりTTL調光では、フラッシュの光量をレンズを通った光を見て判断し、自動でフラッシュのパワーを調光する機能です。
具体的には、以下の手順でフラッシュを調光して発光しています。
- フラッシュがプリ発光(予備発光)
- カメラ内で露出を測定
- 適正露出に調光してフラッシュが本発光
自動というと聞こえは良いですが、このTTL調光は本当に必要な機能なのでしょうか?
Canon独自のE-TTL
一般的にフラッシュの自動調光とはTTLを指しますが、これに混ざってE-TTLという文字も見かけます。
E-TTLとは、キヤノン独自のTTLの事で、露出測定のアルゴリズムにレンズの焦点距離が含まれています。
外光オートとの違い
TTL調光によって駆逐されましたが、過去には外光オートという調光方法も存在しました。
外光オートはフラッシュにカメラのF値を設定し、予備発光でフラッシュに搭載したセンサーで光量を判断して本発光を行います。
シンプルな作りで、フラッシュ単体で調光できますが、F値の入力を怠るだけで、フラッシュの光量が大きく異なるので、TTLに比べると不便と言わざるを得ません。
あると便利なTTL調光
外付けのフラッシュは光の強さを調節することができます。
調節ができると便利な反面、これまで使っていた露出の三要素である「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」に「フラッシュ」が加わる事が難しいポイントで、4つの明るさを調整をする必要が出てきます。
そんな面倒なフラッシュの光量ですが、TTL発光ではカメラの自動露出と同じように、自動でフラッシュの光量を調節してくれます。
つまり、TTLは絞り優先オートやシャッタースピード優先オートのような自動露出に近い機能です。
例えばマニュアル発光では直射と天井バウンス(天バン)を比較すると、天バンの方が光量が必要で、その分の光量を手動で調節する必要があります。
しかしTTLを使えば、自動で光量を調節してくれるので、直射でも天バンでも光量の調整が必要ありません。
そのTTL、本当に必要?
精度としてはそこそこ
僕は普段はマニュアル発光しか使わないのですが、試しにTTLを使って検証していたところ、常に適正な露出が出るかと言うと、そうでもありませんでした。
上で紹介したように、直射と天バンで同等の露出が出る事もあれば、「少し暗いな」という事もありました。
この誤差については、後で編集すれば何とかなる範囲なので、そう大きなデメリットではありません。
俺は信用してないが。
TTLで光量を調節する意味
TTLでも光量の調整は可能であり、露出補正と同じように+0.7や−2.0といったように光量の調整も可能です。
もちろん±0で暗いと思えば、TTLの光量を上げれば良いだけの話なのですが、そこまで細かく調整する余裕と拘りがあるなら、いっそマニュアルで光量を調整しても、作業時間にさほど差は出ないのではないでしょうか。
適正露出も分からない
これはカメラの露出の仕組みと同様ですが、カメラには明るさがわかりません。
フラッシュでも同様で、この特徴はTTLにおいては問題点の一つです。
カメラが黒い背景で撮影すると、露出を明るく撮ってしまうように、フラッシュの場合は光量を上げて発光します。
特に背景が黒い場合では、どう照らしても黒なので、ほとんどのケースでフラッシュは強めに発光します。
TTL調光としては正しく仕事をしている。という事。
カメラには撮影者の意図が分からない
「どこにフラッシュの光を当てるのか」というのは、撮影者にしかわかりません。
フラッシュは被写体のエッジに当てたり、バックライトとして使用したりと、必ずしも全体の露出を上げるためだけに使用するものではありません。
これを知らずにTTLで発光をすると、
- 被写体のエッジにTTLでライティング
- カメラが暗いと判断
- TTLが強めに調整
といったように動作し、撮影者の思うようなライティングができません。
特に多灯ライティングにおいては、メインのフラッシュの光を見て、TTLは弱めに発光といった挙動もあるので、結局はマニュアルでコントロールするのと、あまり変わりません。
若干だがテンポが悪い
これはあまり気にしない人もいるかも知れませんが、冒頭で紹介した通り、TTLは一度弱めの発光をして露出を測定後に、本発光をします。
シャッターボタンを押してから測光をするので、通常のシャッターよりラグがあり、違和感があります。
これだけ遅れると、昆虫などの手持ちマクロは難しい。
フラッシュを使う状況を考えると答えは出てくる
そもそもTTLを使使うタイミングとはいつなのでしょうか?
ライティングが一般的な人物撮影においては、被写体が動いたり、衣装や背景が変わったりすると光量も変わるTTLはむしろデメリットですし、マニュアルで固定した方が光量が安定するので露出も安定します。
商品撮影をするにしても、相手は静物なので、マニュアル発光でじっくりと光量を調節しても、被写体は文句を言いません。
見方を少し一般向けに、自宅で子供を撮る場合を考えてみても、撮影の本番に入る前に
- マニュアル露出
- シャッタースピード1/200sec
- 絞りとISO感度は自由に
- フラッシュの光量を合わせる
上記の設定にしておけば、あとは本番でシャッターを押すだけで良い露出で撮影できるのです。
むしろTTLは壁の色によって光量が変わるリスクもある。
TTLは決して悪い機能ではありません。
とっさの動作が必要な時にはTTLに助けてもらう事もあるかもしれません。
ですが僕はマニュアル発光だけで困った事が無く、TTL機能があっても使っていないのが現状です。