カメラとSNSが普及したことで、それを通じたフォトコンテストも盛んに行われているように思います。
これまではフォトコンテストと言えば、写真雑誌や各イベントが多かったですが、写真の参入の敷居が下がったことで、至る所でフォトコンテストが開かれています。
これまでのフォトコンテストは悪くいうと閉鎖的で、応募用紙の記入などの手間もあるので、一部の写真好きしか投稿していませんでした。
写真がデジタルになったことで、PCやスマートフォンから応募できる、フォトコンテストはかなりオープンな場になってきました。
投稿が簡単になった反面、評価の仕方はどうなのでしょうか。
僕は至る所でコンテストが開催されているため、多くの審査員が必要になり、結果として審査員の質が低下しているのではないかと思います。
写真をやった事がない市長が写真の審査をするケースとかね。
「好き」「きれい」は評価ではない
写真の評価というのはとても難しいものです。「フィーリング」などで片付けられるものではありません。
カレーに例えるなら、たくさんの人がバーモントカレーを美味しいと感じますが、だからと言ってカレーのコンテストの審査はできませんよね?
料理の美味しさの違いが評価できる人にしか料理の評価はできません。料理や写真に限った話ではなく、全てのジャンルにおいて、評価というのは専門家の行うものです。
バーモントカレーは間違いなくウマい!
写真の評価はSNSに移っていく?
とある人に、「写真の評価はコンテストからSNSに変わってきている」「素人でも良い写真と思える事が重要」と言われた事がありますが、僕はそれは違うと思っています。
- 写真のどこがどう良いか説明できない
- 写真からテクニックが読み取れない
そんな人は、写真を評価できるという土台に立っていないのではないでしょうか。
評価の場というのは、美味しいインドカレーがたくさん出てくる場所です。
このインドカレーの違いを「スパイスの比率」「食材の切り方」などを比較して、総合的な順位を付けるのが評価であり審査です。
料理のコンテストでバーモントカレーが入選したらみんな納得できる?
写真の評価ってこんなに難しい
良い写真が出てくるのは当たり前
写真は趣味のジャンルとしては絵画や彫刻等の芸術分野でしょう。
しかし絵画や彫刻と全く異なる点として、絵画や彫刻は長期的な練習が必要ですが、写真は初心者でもある程度は形になります。
カメラの歴史を紐解けば、絵画の下書きとして使用されていた時代や、露出(明るさ)のコントロールが難しかった時代もありますが、技術の進歩によって現在はほぼ手放しでも写真が撮れてしまいます。
技術の向上によって簡単になった事
- 露出(明るさ)のコントロール
- 撮影枚数の制限
- ピントの制御
- 現像料金が不要
- ネットでの情報
つまりカメラのエンジンが発展している以上、良い写真が大量に出てくるのは当たり前の事なのです。
簡単になった写真撮影から、カメラマンの技術を読み取る力がある人が写真を評価できる人と言う事ができます。
バーモントカレーはHouseの技術の結晶。料理が上手いとは言わない。
撮るまでのプロセスを読み取る力
僕はバーモントカレーばかり作るので、インドカレーの評価はできません。
しかし趣味で写真を撮っているので、写真の評価のポイントなら少し紹介できます。
- 構図
- 太陽の位置
- 天候
- 人物の表情や距離感
- 偶然性や必然性
- タイトルのメッセージ性
深堀りをすれば、もっと細かくなりますし、被写体のジャンルによって評価のポイントも様々です。
料理と同じで奥が深すぎるんや…
更に写真の評価の難しいところは、「同じ場所で同じ設定で撮れば同じ写真になる」という事です。
素人でもプロカメラマンと同じ場所に立って、同じカメラとレンズを持って、同じ設定にすれば、同じ写真になります。
写真の評価とは、1枚の写真から撮影地の状況やポジションの選び方、カメラの設定を読み取り、そこから意外性や難易度を評価する作業です。
加工だらけの写真を見抜けるか
写真は今も昔も現場での撮影が第一です。
しかし現場で100%の写真が撮れても、カメラやレンズの性能によって90%になってしまう事があります。
そんな写真編集ですが、編集ソフトの美味しい所を利用して、50%の写真を90%に見せる人が多くいます。
それはどんどん過剰になっており、素人目には「こんなの見たことない」=「写真の技術が凄い」という感想を持つ人も多いです。
「こんなの見た事ない!」ではなく「本当は存在しない」のかも。
写真の加工の前後が見れます
無責任なコンテストになる
写真の審査?うーん写真はわからないけど、綺麗なコレにしておこう!
そんなフォトコンテストの今後を考えてみましょう。
発行される雑誌では、市長賞「加工しまくりの夏の空」です!!という紹介をされるのでしょう。
そんな雑誌を見れば、写真経験の少ない人は「こんな写真が良いのか!」と思い、その写真に近い加工だらけの写真を量産していきます。
その写真が私有地や立入禁止エリアで撮影されたものなら、マナー違反をするカメラマンも増えてきます。
写真経験のある人は「この程度の評価しかできないのか」と思い、今後そのコンテストに応募する事はありません。
つまり未経験者の視点でも、経験者の視点でも、デメリットしか存在しないのです。
そんなコンテストが長く続けば、最終的に写真界隈から「あそこのコンテストはダメだ」というレッテルすら貼られるでしょう。
一般人目線ではどうでしょうか。
「この観光地すごくキレイ」と思って現地に足を運んでも、「写真と違った」という感想が出てきては、発信する側としても面白くありませんよね。
詳しい応募要項が出せない
フォトコンテストに限った話ではなく、写真の撮影を依頼する場合も含めて、具体的な指摘が多い方が依頼者の目的としている写真が送られてきます。
「自分には無理だな」という諦めや、「やった事ないけど、挑戦してみよう」という線引きになるので、撮影者側としてもメリットばかりです。
ですが、カメラの知識が無くては、応募に関する必要事項もアナウンスできません。
未発表作品。
個人のブログ、ウェブサイトなどに掲載されたものは構いません。
他のフォトコンテスト等に応募や入選している写真はご応募できません。
合成、変形不可。
表紙に採用された場合は、表紙サイズ(B5判)に合わせトリミングして掲載させていただきます。軽度の露出や色調の補正をする場合があります。
動植物の個体を主題とする写真は、野生のものに限ります。(風景の一部や文化などを主題とする場合は除く)
餌付け、立ち入り禁止区域での撮影、繁殖の妨げとなる撮影など、自然環境に悪影響を与える方法で撮影したものは不可。
顔が分かる状態で人物が写っている場合は、応募にあたりその人物の許可をとってください。
応募作品は返却いたしません。
【作品募集!】第9回会報『自然保護』表紙フォトコンテスト<6/1~9/30> – 日本自然保護協会オフィシャルサイト
「加工不可」という指示は写真愛好家からすると、めちゃくちゃ不親切です。
Jpegは全て加工された写真ですから。
写真の評価は写真を撮る人にしかできない
フォトコンテストを開くのは良いのですが、評価や順位をつけるなら写真家や評論家を招致して責任のある物にするべきだと僕は思います。
ちょっと厳しい感じで書いてしまいましたが、「好き」「きれい」という言葉はどんどん発していきましょう。
「お父さんのカレーは美味しい」と言われるのは間違いなくモチベーション上がりますし、写真も同じです。
我が家はもちろんバーモントカレー。