写真における「ボケ」は、主題を引き立たせ、作品に深みや立体感を与える重要な写真表現のひとつです。
たとえば、ポートレート写真で背景をぼかして人物を際立たせたり、風景写真で前景をぼかして奥行きを強調したりと、多くの場面で活用されています。
しかし、ボケを生み出す方法は数多く提案されていますが、実際に現場で実行可能な方法は非常に限られています。本記事では、ボケの仕組みと効果的な手法を解説しながら、最も実践的な方法をお伝えします。
ボケの仕組みと役割
カメラはレンズによって光を屈折させ、イメージセンサーに被写体を投写しています。この屈折により、光が綺麗に結合する場所を「ピントが合う」といい、ピントが外れる部分が「ボケ」となります。
- ピントが合う=合焦
- ピントが外れる=ボケ
- ピントが合っていてほしいけど外れている=ピンボケ、ピントが甘い
ボケとピンボケは異なる目的を持つ表現ですが、実際には同じ光学現象に基づいています。
意図的にボケを取り入れることで、主題を明確化し、作品にメリハリを加えることができます。
被写界深度とは?
カメラでピントが合う部分は、実際には非常に薄い平面でしかありません。しかし、写真を見る際には、その平面を中心に「ピントが合っているように見える範囲」が存在します。この範囲を被写界深度と呼びます。
被写界深度の基本的な特徴
被写界深度には、以下のような特徴があります。
- 浅い被写界深度:
- ピントが合って見える範囲が狭く、背景や前景が大きくボケる。
- ポートレートや商品撮影で被写体を際立たせるために使われる。
- 深い被写界深度:
- ピントが合って見える範囲が広く、ボケが確認しにくい。
- 風景写真などで全体をシャープに見せたい場合に適している。
被写界深度を変える4つの要因
被写界深度は、以下の要因によって変化します。それぞれの要因がどのように影響するのかを具体的に見てみましょう。
要素 | 浅い被写界深度(背景がボケやすい) | 深い被写界深度(全体にピントが合う) |
---|---|---|
焦点距離 | 長い焦点距離(望遠レンズ) | 短い焦点距離(広角レンズ) |
絞り | 絞りを開ける(F値を小さくする) | 絞りを絞る(F値を大きくする) |
被写体とカメラの距離 | 被写体をカメラに近づける | 被写体をカメラから遠ざける |
センサーサイズ | 大きなセンサー (フルサイズ、APS-Cなど) | 小さなセンサー (MFT、スマートフォンなど) |
実践的なボケの作り方

写真をボカす方法は4つありますが、実際に現場で実行可能な選択肢は限られています。
構図の重要性
写真において最も重要な要素は「ボケ」ではなく「構図」です。
構図が決まった後に、被写体を動かしたり、カメラの位置を変えたりすると、背景や前景とのバランスが崩れ、意図した構図とは変わってしまいます。
構図は写真の物語やメッセージを形作る基盤となるため、一度決まった構図を変更することは簡単ではありません。
構図が決まった後にできること
被写界深度を変える方法はいくつかありますが、構図を変えずにボケを調整する方法を考えると、唯一調整可能な方法は「絞りを開ける」という事です。
絞りを開くことで被写界深度を浅くし、背景や前景を効果的にボカすことができます。
撮影モードの絞り優先モードを活用すれば、簡単に絞り値を調整できます。
つまり、構図を最優先すると、ボケを生み出す現実的な手段は「絞りを開く」ことに限られるのです。
RAW現像でさらに写真を引き立てる
ボケを活用した美しい写真を撮影したら、次はその写真をさらに引き立てるステップに進みましょう。それがRAW現像です。RAW現像を使うことで、写真の明るさや色味を微調整し、撮影時に表現しきれなかった細部を最大限に引き出すことができます。
特に背景のボケを活かした写真では、被写体の色彩やコントラストを調整することで、作品全体に統一感を与えたり、クオリティの高い仕上がりを目指したりすることが可能です。
