ソニーの発色は本当に悪いのか?炎上騒ぎから考える「カメラに振り回される」ということ 

ソニーの「発色(色味)論争」。特定のアカウントによる「ソニーのカメラは肌が緑っぽくなる」「人物撮影に向かない」といった発言をきっかけに、ネット上では擁護派と批判派が入り乱れる大炎上へと発展しました。 

おそらく該当アカウントは、オートで撮影し、Jpeg撮って出しで出力した場合の写真の良し悪しについての投稿だったのでしょう。もしRAW現像やクリエイティブルックなどの設定まで試した上での結論なのであれば、その検証結果を示してもらえれば話は変わります。

しかし、そうした検証の過程が示されていない以上、読者から見れば「オート+Jpeg撮って出しの結果を見て、ソニーの発色を評価した」と受け取るしかありません。 

そこから「そんこまでネガティブ要素ではない」「RAW現像がある」など、初心者が見えない空中戦に発展していきました。

「撮って出し」の味付け論争、その正体

キヤノン、ニコン、ソニー、富士フイルム……各社それぞれに独自の画作り(カラーサイエンス)というものがあります。並べて比較すれば、肌の赤みの強さや彩度の傾向に違いがあるのは、多くの人が分かるでしょう。

初心者にとって「オートで撮って、Jpegですぐ綺麗な写真が出てくる」ということ自体は、とても重要です。 

しかし、その写真の中にある「少し赤い」「少し緑っぽい」「少し彩度が高い」といったメーカーごとの発色差まで、カメラ選びの重要項目として考える必要があるのでしょうか。 

機材購入の段階で「撮って出しの色のわずかな違い」を機材選びの重要項目にしているのなら、それは「写真好き」というよりも「カメラオタク」の領域に足を踏み入れているのではないでしょうか。

機材そのものを愛でるのがカメラ趣味の一側面であることは否定しません。かつて自分自身もそうだったからこそ、その熱量を頭から否定するつもりはありません。

ですが、これから写真を始めようという層が、メーカー間のわずかな色味の差異で悩み、萎縮してしまうような現状は、どこか健全ではないと感じるのです。

設定を知り尽くしているのか?という問い

そもそも、デフォルトのオート設定だけで全ての撮影シーンに完璧に対応できるほど、カメラは万能ではありません。もしオートで全てが完結するなら、メーカーが用意する膨大なカスタム設定や調整機能などは最初から不要なはずです。

例えば、刻々と表情を変える夕暮れ時のグラデーション、独特な反射を伴う日陰のポートレート、あるいは演色性の低いライブハウスや室内の人工光源など、カメラのオート機能だけでは判断が難しく、デフォルトの画作りでは本来の意図どおりに仕上がりにくいシチュエーションは星の数ほど存在します

事実、争点になっているカメラの「肌色」に関して言えば、今のデジタルカメラには驚くほど詳細な調整機能が備わっています。ソニーであれば「クリエイティブルック」、キヤノンであれば「ピクチャースタイル」といった形で、好みの色味を追い込むためのプリセットが用意されており、ホワイトバランスや色味の調整を使うことで、自分の思う描写に近づけていくこともできます。

「デフォルトのJpeg撮って出しの印象だけで『このメーカーは色が悪い』と決めつけるのは、あまりにも早計ではないか」ということです。

もし本当に各メーカーの設定を一つひとつ試した上での結論なら、それはもうカメラオタクの極みでしょう。そこまでやって「ソニーは人物撮影に向かない」と言うのであれば、僕はむしろ、その検証結果を見てみたい。

ただ、そこで必要になるのが作例です。

「この条件で撮ったら、こうなった」
「設定をこう変えても、こうだった」

そうした写真があれば、少なくとも議論の土台はできます。

写真の話をしているのですから、言葉だけで「このメーカーは色が悪い」と断言するより、実際の写真を見せたほうが早いのです。

写真を語るなら、作例を出さないとな。

主観の不毛さと、表現の着地点

今回の投稿は、(おそらく)オートの撮って出しで綺麗に仕上がるメーカーはどこなのか、という話だったはずです。しかし、突き詰めれば、どんなに優れたメーカーのカメラを使ったとしても、「あれ、現場の光に対して思うようにならないな」というケースは絶対にあります。

むしろ、実際の撮影現場においては、オートがいかに優秀に仕上がろうとも、自分自身の納得のいく仕上がりと完全に合致していることは稀です。

そこから、Jpeg撮って出しで追い込む人もいれば、RAW現像で仕上げる人もいます。重要なのは、どちらを選ぶにしても「カメラのオート設定=そのカメラの限界」ではないということです。 

オートで撮ることは悪いことではありません。

むしろ最初は、オートのほうが写真を楽しめる場面もたくさんあります。

しかし、思いどおりの色にならなかったときに、「駄目なカメラだな」で終わってしまうのは、もったいないです。

カメラは、シャッターを押した瞬間に完成する道具ではありません。設定を知り、自分の好みに近づけていく。その余地があるからこそ、写真は面白いのだと僕は思っています。

機材に振り回される人ではなく、機材を使いこなす人になってほしい。

それが今回の炎上を見て、一番強く思ったことでした。 

いいから、カメラ持って外行こうぜ!

俺のデジモノ手記


01 思考の章

写真は、楽しければ良い


02 技術の章

カメラで、遊ぶ


03 表現の章

「誰か」の真似は、もう終わり


04 結実の章

今の僕の答え


付録

使用機材とカメラ設定