写真系ユーチューバーはなぜレビュー系ユーチューバーに「成り下がる」のか

当ページのリンクには広告が含まれています。

最近、YouTubeを開くたびにうんざりします。

かつて「カメラの楽しさ」や「写真の魅力」を熱心に語っていたはずのカメラ系ユーチューバーたちが、気づけば揃いも揃って

  • 「最新ボディの爆速レビュー」
  • 「〇〇のレンズがヤバイ!」
  • 「神コスパ三脚!」
  • 「今年買ってよかった機材」
  • 「カメラバッグの中身」
  • 「ブラックフライデーのおすすめ機材!」

など、判で押したような機材紹介動画ばかりを投稿しているからです。

彼らはなぜ、表現者であることを二の次にして、家電量販店の店員のような「レビュー系」に成り下がってしまうのでしょうか。

今回は、AI(Gemini)による最新のサンプリング調査の結果を交えながら、その逃れられない構造的な末路について、僕なりの視点でお話ししたいと思います。

目次

AIが分析した「機材依存度」の衝撃的な実態

今回、この記事を書くにあたり、Geminiに依頼して「ガジェット系を除いた、写真・カメラ専門ユーチューバー20名」の最新動画(各20本)をサンプリング調査してもらいました。

調査方法は、サムネイルやタイトルに「特定の機材名・ブランド名」が明記されている、あるいは「機材の物撮り」が主役になっている動画を【機材依存(レビュー系)】と定義し、その割合を算出するというものです。

その結果、驚くべきことに20名の写真・カメラ専門ユーチューバーの平均機材依存度は約75%に達していました。

つまり、彼らの発信の4分の3は、もはや写真そのものではなく「撮影機材」の話なのです。

レビュー系ユーチューバーになった「実例」6名

具体的に、どのようなユーチューバーがレビュー系へと傾倒しているのか。Geminiのサンプリング結果から、特に顕著な6名をピックアップしました。

西田航氏(機材依存度:85%):プロ写真家としての矜持やプリントの重要性を説く一方で、サムネイルのほとんどはCanonやLeicaのロゴと製品写真で埋め尽くされています。もはや「写真家」というより「高級カメラ店の店主」のような佇まいです。

イルコ・アレクサンダロフ氏(機材依存度:80%):ライティング技術の伝道師として一世を風靡しましたが、最近の動画は「神レンズ」や「最新SONY機」の検証が中心。結局、光の魔術も機材紹介を際立たせるためのスパイスにされてしまいました。

ゆ〜とび氏(機材依存度:80%):風景写真の現場実況で人気を博しましたが、最近はメーカーから提供された最新機材のプロモーション的側面が強まっています。結論が常に「この機材が良い」に収束する点に寂しさを感じます。

サンセットスタジオTV(機材依存度:85%):「現場の裏技」的なハウツーも多いですが、直近の動画は「爆速」「検証」「激安」といった言葉が並ぶ機材テストがメインです。撮影技術さえも「機材の良さを証明するための道具」になっている印象を受けます。

コムロミホ氏(機材依存度:75%):女性フォトグラファーとして「スナップの楽しさ」を優しく発信するスタイルですが、その実態は非常に高い機材依存度を示しています。直近の動画では、FUJIFILMや小型ミラーレス機をフックにした「お散歩カメラ紹介」が目立ちます。

もろんのんTV(機材依存度:65%):旅やVlogを通じた写真の楽しさを発信していますが、最も再生回数が伸びるのは「カメラ設定」や「新製品レビュー」の動画。視聴者の需要に合わせる形で、徐々にレビュー系への比重が高まっています。

Geminiによる算出結果です。俺を責めないでください。

写真のノウハウには「終わり」がある

なぜこれほどまでに皆レビューに寄るのか。

それは、写真の撮り方、いわゆるノウハウにはすぐに「頭打ち」がくるからです。

写真の基礎として語られるのは、せいぜい次のような項目です。

  1. 露出の考え方(絞り・シャッタースピード・ISO感度)
  2. オートフォーカスの基本的な使い方(シングルAF、コンティニュアスAF)
  3. レンズの画角
  4. 一般的な構図(三分割法やシンメトリーなど)
  5. 撮影ポジションや撮影アングル
  6. 自分の得意ジャンルの撮影のポイント

これさえ話せば、あとは「もう好きに撮ってください」という結論に辿り着きます。

YouTubeで発信を続ければ、写真の語るべきノウハウは必ず枯渇します

そのネタ切れの先に待っているのが、新製品が次々と現れる「機材レビュー」という無限ループなのです。

最小限の勉強は露出とピントかな。

「機材」は数字が取れる という現実

実は、このブログでも過去に機材ニュースを扱ってみたことがあります。結果は、PV(アクセス数)が面白いように伸びました

しかし、機材ニュースは最新機材や過去の機材との細かい性能差を検証することに終始し、写真表現の楽しさからは完全に切り離されてしまいます

読者にカメラの情報を届ける実感はありますが、自分自身がワクワクすることはありませんでした。

そして後継モデルが出る頃には紹介した機材ニュースは古い情報として埋もれ、トレンドによって読まれなくなる記事を目にするたび、自分の割いた時間の虚しさを感じました。

スペック表を読み上げ、壁のタイルを撮影して等倍表示で解像度を語り、PVの上下を観測する作業は、もはや写真好きのすることではありません。

結局、僕は機材ニュースを追うのをやめました。なぜなら、「楽しくない」からです。

本当に紹介したい機材やソフトはキチンと紹介するよ。

続けられるのは「機材オタク」か「承認欲求の塊」

この不毛なレビューのいたちごっこを続けられるのは、純粋な「機材オタク」か、あるいは再生数という数字に飢えた「承認欲求の塊」のどちらかでしょう。

彼らは単なる数字やPVを追い求めるあまり、機材の細かいスペックや最新情報を徹底的に分析し、それを面白おかしく発信することに熱中しています。

結果として、カメラを「表現の道具」として楽しむことよりも、クリックを稼ぐための手段に変えてしまったのです。

彼らの動画は撮影技術や写真表現の魅力よりも機材の話題に終始し、視聴者もまたそれを求めるようになっています。

この構造は一度始まると抜け出せず、レビューのいたちごっこは際限なく続くのです。

「写真もカメラも好き」という配信者や視聴者に問いたい。「それは写真のためなのか?」と。

では写真系ユーチューバーはどうあるべきか。少なくとも、スペック表を読み上げることでも、新製品を批評することでもないはずです。

自分が撮った写真を見せ、そのとき何を考え、何を感じたのかを言葉にする。他人の写真集を開き、なぜこの一枚に惹かれたのか、なぜ違和感を覚えたのかを語る。

それが文字通り「写真を話す」ということではないでしょうか。少なくとも僕は、そういう発信こそが写真と向き合う動画配信だと思っています。

数字として伸びないけどね。だからみんなやらないんだよ。

俺はレビュー系ブロガーにはならない

「カメラは道具であり、写真は表現です」

この言葉を、かつて多くの写真系ユーチューバーが口にしていました。

ですが今、彼らのチャンネルに並んでいるのは何でしょうか。最新機種、神レンズ、コスパ、比較、検証。そのどれもが“写真”ではなく、“商品”の話です。

配信当初の自分が、今の自分を見たらどう思うのか。その問いから、目を背け続けた結果が今の姿なのではないでしょうか。

僕は、写真系ユーチューバーとして前線に立っていた人たちが、いつの間にかメーカーの新製品を右から左へ流す存在になっていく様子に、心底うんざりしています。

視聴者に迎合し、数字に媚び、語るべきことが尽きた末に行き着いた先が“レビュー”だった。それを堕落と呼ばずに何と呼ぶのでしょう。

気づけば、最新機材を追いかけること自体が目的になっていませんか。

自分が何を撮りたかったのか、なぜ写真を始めたのか、もう思い出せなくなってはいませんか。

断言します。写真を楽しむのに、最新の機材は必要ありません

買う予定もない機材の動画を眺めて満足している時間があるなら、その画面を閉じて、外へ出てシャッターを切るべきです。

少なくとも僕は、数字のために魂を売り、家電量販店の店員になるつもりはありません。

キタムラで働いていた中村さん。あの人ほど親身で接客が上手なスタッフはいなかったな。

数字で測ると写真はつまらなくなります。

目次