RAW現像を始めた頃、僕自身もスライダーを行ったり来たりしていました。 「今の調整は本当に良くなったのか?」と分からなくなり、露出を上げては戻し、彩度を足しては引く。その繰り返しの末に、結局リセットして最初からやり直す。
当時は「丁寧に現像しているつもり」でしたが、今振り返ると、やっていたのは写真を良くする作業ではなく、判断基準を失ったまま迷い続ける行為でした。
ここで、最初に強調しておきたい重要な前提があります。
RAW現像は、失敗した写真を救済するための作業ではありません。撮った時点で、編集後のイメージまで含めて写真はほぼ決まっています。
撮影時に何を見て、どんな光を綺麗だと感じたのか。そのイメージが曖昧なまま撮った写真は、現像段階で必ず迷います。「どこをどう触ればいいのか分からない」という状態に陥りやすいのです。
RAW現像に、誰にでも当てはまる正解はありません。
ただし、「迷わずゴールへ辿り着くための考え方と順番」は存在します。
僕にとってのRAW現像は、過剰な演出を盛り込む作業ではなく、現場で見た光を濁りなく再現するためのものです。
一分一秒でも早く現像を終わらせ、また次の撮影に出かけるために、僕がRAW現像で大切にしている考え方と判断の順番を紹介します。
下地を整える:収差と歪みの除去
まず行うのは、レンズが原因で起こった「物理的な歪み」を取り除く作業です。
この工程を最初に行う理由はシンプルで、後の調整で迷わないために、レンズ由来の影響を取り除きます。
収差の除去を得意とするRAW現像ソフト

- ディストーション(歪曲)の補正
- パース(遠近)の補正
- フリンジ(色にじみ)の除去
ディストーション補正は、レンズ特有の樽型・糸巻き型といった画面全体の歪みを整える処理です。建築物の直線や画面の端を、まず正しい形に戻します。
パース補正は、カメラの位置や角度によって生じた遠近の歪みを整える処理です。縦線がすぼんだり、意図せず煽り・俯瞰が強調された印象を抑えます。
先にトリミングをすると、これらの補正による変形で再びトリミングが必要です。そのため、必ず現像の最初に処理します。
フリンジは、コントラスト差の大きい部分に現れる色にじみです。
これを残したまま露出やコントラストを触ると、色の濁りに目が慣れてしまい、明るさや色の判断を誤りやすくなります。
画角を整える:記憶をフレーミングする(トリミング)
トリミングは、見栄えを良くするための作業ではなく、撮影時に自分がどこを見ていたのかを明確にするための工程です。
画面の端に残った不要な情報や、意図せず入り込んだ余白は、撮影時の視線や集中を曖昧にしてしまいます。
撮影時に追い込みきれなかった角度のズレも、ここで微調整します。
俺ほぼ100%やります。角度のズレはPCの方が丁寧で分かりやすい。
ホワイトバランス:イメージしていた「温度」に戻す
ホワイトバランスは、露出補正の前に行うのが鉄則です。
色温度が変われば、見た目の明るさの感じ方も変わってしまいます。
- 色温度:写真に「青 or 橙」を加えるパラメーター。
- 色かぶり:写真に「緑 or 紫(マゼンタ)」を加えるパラメーター。
基本的には色温度の調整で解決しますが、それで拭いきれない違和感がある時は「色かぶり」が原因であることが多いです。
明るさを補正する:ここからが本番
ここまでは、写真を正しく判断するための準備でした。
ここから初めて、「その場でどう見えたか」「どこに目が留まったか」という撮影者の感覚が、写真として形になります。
だからこそ、この工程がRAW現像の本番です。
- 露出・コントラスト
- ハイライト・シャドウ
- トーンカーブ
まず露出・コントラストで、写真全体の明るさとコントラストの大枠を決めます。
次にハイライト・シャドウを調整し、明るすぎる部分を抑えつつ、暗部に元々含まれていた情報を整理します。
最後にトーンカーブで階調を整えます。
重要なのは、スライダーの数値やトーンカーブの形状ではなく、撮影時のイメージです。
色を補正する:最小限の彩度
色の補正は、必ず明るさを決めた後に行います。明るさが変われば、色の濃淡も変化するからです。
ここでも意識するのは「盛る」ことではなく「再現」すること。
彩度を上げるのは簡単ですが、それは撮影時に感じた印象を強める行為であって、正確に再現する行為ではありません。
写真編集における「やりすぎ」については、別の記事でも整理しています。

最短距離を見失わないための、判断基準としての「やらないこと」

これで、僕の現像は終わりです。
ここから先は、具体的な操作ではなく、僕がRAW現像で大切にしている判断基準の話です。
「部分補正・HSL」を触らない理由
「部分補正」や「HSL(特定の色の調整)」には、ほとんど触れません。
理由はシンプルで、ピンポイントな補正は現場の光を壊してしまうからです。
特定の色だけを強調したり、無理にシャドウを持ち上げたりするのは、僕にとっては「現場の再現」ではなく「作り替え」です。
ただし、これには例外があります。草木や壁の色の反射によって、被写体の色がシフトした場合です。
特に多いのはポートレートです。人の肌は、反射の影響を受けやすく、光の影響をそのまま残すと、記憶にあるその人の印象から離れすぎてしまうことがあります。
そのような場合は、HSLや部分補正を使って肌の濁りを取り除き、記憶の中の健やかさを取り戻す作業を行います。
俺良い笑顔には、健康的な肌。異論はないよな?
ヒストグラムを判断基準にしない
どの工程でも、ヒストグラムはほとんど見ていません。
数値的に端を詰めるよりも、画面を見て「白が白として眩しすぎないか」「黒が黒として沈みすぎていないか」を確認します。
撮影に責任を戻す、という結論
納得のできる写真ができないときは、ソフトの問題ではなく、「自分の写真が下手だった」と言い聞かせています。
そう割り切って、次の撮影の糧にする方が建設的だと思っています。
現像は、あくまで最短距離で忠実に再現する。
自分の見た景色を大切にすることが、今の僕の写真編集です。
俺「写真編集が上手い」って、写真好きに対する一番の皮肉だよな。
最短距離と言っても、他人のプリセットを当てるのは違います。


